注:2000/10/25メディ スコープ」に掲載されたものです
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今回は'蓄膿症"として知られる慢性副鼻腔炎について取りあげます。
風邪や鼻アレルギーなどと診断されていても副鼻腔炎が本当の原因となっている場合も少なからずあります。
また最近の話題の治療についてもご紹介します。
目次 |
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顔面骨は鼻を取り囲むようにしていくつか骨の空洞があり、これを総称して副鼻腔と呼んでいます。
副鼻腔の粘膜に炎症が起こると、そこで大量の粘液が作り出され、鼻汁として鼻腔から排出されます。副鼻腔はそれぞれ独立した部屋になっていて、特に鼻腔との境界が非常に狭い穴でつながっているため、軽度の炎症で腫れても穴がふさがってしまいます。
副鼻腔の粘膜が細菌やウィルスに感染したり、ハウスダストや花粉症などのアレルギーが原因で炎症を起こし、膿、粘液が排出されず副鼻腔にたまるのが副鼻腔炎です。
副鼻腔炎には急性と慢性の2つのタイプがあります。
急性副鼻腔炎の症状は風邪に引き続いて起こりますが、慢性副鼻腔炎の原因は複雑で急性炎症の繰り返しや遺伝的体質、アレルギー、鼻の粘膜が厚くなって詰まってしまう肥厚性鼻炎など様々です。
また虫歯の炎症が副鼻腔にまで及んだり、飛行機や潜水での副鼻腔の気圧調節がうまくいかないことが原因になる場合もあります。
急性副鼻腔炎の症状は風邪に引き続いて起こり、発熱や頭痛、鼻づまり(鼻閉感)、鼻汁など多彩です。
慢性副鼻腔炎は近年病像が変化し、症状が軽症化しつつあるという報告が相次いでいます。かつては黄色く膿粘液性だった鼻汁が、最近は白くさらさらしている場合が多いようです。早期の抗生物質の投与などが関係していると思われます。
また、抗生物質が投与され過ぎていることにより、薬剤耐性(薬が効かない)肺炎球菌が慢性副鼻腔炎の難治化に関与しているとも言われています。
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鼻閉感や粘っこい鼻汁、においが分からないといった鼻の症状や頭痛・頭重感などに加えて、意力散漫、記憶力減退といった症状を認めることもあり、仕事の能率が上がらなかったり、勉強に集中できないような場合があります。また、鼻汁が喉にまわり、咽喉の炎症や気管支炎が起こることもあります。
以上のような症状の他、鼻X線検査で副鼻腔に認められる貯留液や粘膜肥厚が陰影として認められることで診断がつきます。
乳幼児で10日間以上続く咳や発熱、鼻汁、喘鳴などのかぜ様症状の多くの原因が、副鼻腔炎であることが最近わかってきました。
特に乳幼児の場合は鼻汁や鼻閉といった典型症状ではなく、咳、発熱、喘鳴といった一般のかぜと区別しにくい症状であることが多く、かぜ、喘息様気管支炎、鼻炎などと診断されたままのことが少なくありません。また、上述のレントゲンによる診断も、乳幼児の場合には、上顎洞などが未発達なため、陰影がぼやけて診断がつかないことも多く見過ごされやすくなっています。
通常の小児の風邪であれば、3〜4日で症状が改善するのが普通です。それが長引き発熱や喘鳴、肺炎などを繰り返すようであれば、副鼻腔炎を疑うべきです。
米国などでは、咳や鼻水、鼻閉、発熱などの呼吸器症状が10日間以上続き、改善傾向がない場合には、急性副鼻腔炎の併発を疑うべきだとする診断指標(The 10day mark)が使われています。
また、2歳〜5歳の幼児の鼻アレルギーは、その半数以上が副鼻腔炎を併発しているといわれています。
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副鼻腔炎の治療は急性と慢性では少し違いますが、基本的には粘膜の腫れを取り、鼻汁を外に出して本来の鼻腔の絨毛運動機能を回復させることです。
急性期には抗生剤、消炎酵素薬、粘液溶解薬、抗炎症薬、抗アレルギー薬の内服や、炎症をおこしている粘膜へのネフライザー(噴霧器)による噴霧、抗生剤を副鼻注入するなどの方法があります。
慢性期では急性期とは違う種類の抗生剤(マクロライド系抗生剤)を少量長期的に服用することの有効性が明らかになっています。
ここで最近注目されているのがヤミック療法です。ヤミック療法はラテックス製のヤミックカテーテルを用いて副鼻腔内の貯留液を排液させ、同時に抗生剤やステロイドなどの薬液を副鼻腔に注入する治療法です。
91年の国際鼻科学会で日本に初めて紹介され、98年にようやく厚生省から医療器具として輸入を許可され、現在は保険適応となりました。適応症は、急性及び慢性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎の急性増悪(もともと慢性副鼻腔炎があったところに感染などを合併して急に悪くなること)です。
薬を投与する前に、副鼻腔にたまった貯留液を排出しておくと、治療効果が高まるのですが、これまでの洗浄法では患者さんに苦痛を強いたり、手技的に難しいなどの問題がありました。ヤミックカテーテルを用いた方法では患者さんにとっても負担が少なく、小児でも6歳以上なら実施できるほどで、効果も優れています。
患者さんは座ったまま(薬を注入するときは横になる)、両側で15分程度で治療は終わります。治療期間は、それぞれの患者さんにより異なりますが、週1回、3週間連続して外来で受ける、といった具合です。
特に前頭部痛と鼻汁がのどに流れる後鼻漏の症状に非常に効果的で、治療の継続を希望する患者さんが多いようです。
抗生剤の内服だけでは効果のない患者さんや、薬を飲みにくい妊婦さんにも外来通院で治療が行えるというメリットがあります。また、抗生剤の内服と併用するという方法もあります。治療効果の高さから考えても、今後、副鼻腔炎の保存的治療の中心的存在になっていくのではないかと予想されます。
ただし、既に副鼻腔内の粘膜が肥厚しポリープ化した例、保存的治療を3〜6ヶ月行っても症状が改善しない場合は、手術の対象になります。
かつての副鼻腔の手術は、局所麻酔を使い、口内部の上唇と歯肉部の間を切開する方法が主流で、入院期間も長く(片鼻で約10日間、両鼻で3週間)術中の痛みも強いなど患者さんに大きな負担がかかっていました。
しかし最近は内視鏡による手術が主流になっており、骨を大きく削ったり粘膜を完全に除去したり口側からの切開もしないですむようになりました。
直径約4o、長さ約15pの内視鏡を外鼻道から鼻腔に挿入し、モニターで鼻腔内部を直接見ながら治療が行われます。手術時間は両鼻で約1〜2時間で、入院期間も一週間から10日間くらいですみます。但し術後� ��通院期間が長く1年〜1年半の通院が必要です。それでも非常に良好な効果が得られることから、実施する医療機関が増えています。
また内視鏡治療後の処置にもヤミックカテーテルが、術後の副鼻腔粘膜の正常化のために有用であるなど、併用して用いられる場合もあります。
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