手首の付け根のところの骨が折れてしまうことをいいます。
特に、高齢の方の場合、骨が弱くなっているので、
単純な折れ方ではなくて、
複雑な折れ方をする場合があります。
骨折の原因になります。
(これを橈骨といいます)が短くなって写っています。
横から見ると、橈骨は手首に近い方で、
上に向いて折れてしまっています。
手を上げた状態で、骨折する場合がほとんどです。
作業場から転落したり、
交通事故による強い外力がかかった場合は、
関節の中にかかるような複雑な骨折形態になります。
骨粗鬆症による骨の弱さがもともとあるので、
軽い外力でも簡単に骨折してしまうことが多いのです。
まして、強く手をつくような場合、
一つだけの骨片だけでなく、
いくつかの骨片ができるような粉砕型の骨折形態に
なる場合が多いのです。
矢印で示したように段差ができてしまうケースがあります。
こういう段差がそのままになると、
手首の動きに支障をきたしたり、
痛みが出たりします。
骨がさらに下へずれてしまうような場合には、
整復といって、もとの形にできるだけ戻すように試みます。
そのうえで、元通りになれば、ギプス固定をして、
患部を安静にする場合もありますし、
ギプスをしても再びずれてくるようであれば、
手術療法が選択されます。
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左の図のように、親指側と小指側に手を動かすと、
橈骨の上で、積木の様な小さな骨が
動いていることがわかります。
ですので、骨折が生じると、
スムーズな動きが損なわれることになります。
手首を上に上げたり、下に下げたりするときには、
橈骨は受け皿のようになって、
なめらかな動きに役立っています。
しかし、関節の部分に段差が生じたりすると、
上下の動きの範囲が悪くなることがあります。
靭帯によってつなぎ止められているいくつかの骨があります。
橈骨が骨折すると、隣の尺骨の関節に影響が出るだけでなく、
舟状骨、月状骨へも影響が出て痛みが続くケースもあります。
ですので、骨折後の治療の最大目標は
折れた骨を元通りの位置に戻すことになります。
患者さんのレントゲン写真です。
左手の手首の骨が若干上向けになっていて、
折れているのがわかります。
ギプスを巻きこんで固定療法を行いました。
レントゲンも途中で何回か撮りながら、
骨折部分を確認していました。
そこで、ギプスも緩みが生じてくれば、巻きなおしをして、
できるだけ骨折部分が動かないように固定し続けました。
固定期間中はずれていなかった骨が
固定を外した時点で少しずれてしまっていました。
これは、骨粗鬆症があると、骨自体がもろくなっているので、
いくら元通りにしたところで、地盤沈下をおこすように、
骨が崩れてくるためです。
痛みの軽減にバイオフィードバック
この方は手首を動かしたり、
日常生活上は問題がありませんでした。
しかし、変形して骨折が治ると、
手首を動かすと痛みが続いたり、
動きに制限がでるので、できることならば、
骨ができるだけもとの位置に戻って、
なおかつ、つぶれないようにするにはどうしたらいいのか、
当院では考えました。
左の写真のように、指に網の様な指サックをつけて、
その先を紐で吊るし、引っ張り上げるようにします。
上と下から手を引っ張るような形にします。
このようにして、持続的に骨折部分を引っ張ることにより、
短縮してしまった橈骨を引き上げる作用が働きます。
手技を加えます。
上にずれた骨を下に押し込むような形で整復します。
さらに、骨折部分がずれないように押さえこんでおきます。
もちろん、この時には、
骨折部分を押さえると痛いので、
医師の立会いの下、
部分麻酔をかけて整復を行います。
他の機能に支障をきたしたままでは何にもなりません。
そこで、骨折部分はしっかり押さえこんで、
他の部分は使えるように、指先ができるだけ出るように、
ギプスをカットしています。
この利点は、指が使えるだけでなく、
手のむくみ予防にもなりますし、
固定を外した後に、いち早く日常生活に復帰できるように、
リハビリ期間も短縮できることにあります。
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手の部分でゆとりがどうしても出てきます。
左の絵のように緩みが出てきて、隙間が生じてしまいます。
そこを支点として骨が動いてしまいます。
再び上で示した様なフィンガートラップをして、
固定を再度行っています。
押さえこむポイントも、
腕から手にかけて、しっかりと押さえこむようにしています。
(こういう技術をモールディングと言います。)
63歳の女性の方です。
転倒して受傷されました。
受傷当日にフィンガートラップ整復を行って、
ギプスを固定しました。
指先が使えるようにカットしてあります。
お箸を持ったりすることで、指が固まったりしないように、
リハビリ効果も狙っています。
骨は癒合していて、安定しているので、
手首を動かすリハビリを積極的に開始しました。
多少短縮が残っていますが、
手首の機能には全く問題はありません。
「日本柔道整復接骨医学会」において、
塩田桃子先生が
当院で取り組んだ「橈骨遠位端骨折」の
成績を報告されました。
演題名は
「高齢者不安定型橈骨遠位端骨折に対する保存療法の治療成績」です。
来院された60歳以上の橈骨遠位端骨折の方を対象として、
アンケート調査しました。
アンケート内容は、痛み・動き・手の指の力・変形の有無・手の腫れ・神経障害の
6項目について調査しました。
その結果、18点を満点として、16点以上であったものを優とすると、
8割の方が優に入っていました。
レントゲン写真で評価をするためにいくつかの計測方法があります。
左の写真にあるように、橈骨の関節部分の角度(A)と、
橈骨の短縮度合いを示す(B)が指標になります。
一般に、角度Aは正常範囲が26°〜30°ぐらいが
正常といわれていますが、
10°以下で治療成績不良といわれています。
また、橈骨の短縮度合いを
横にある尺骨の位置関係と比べて調べた場合に
5mm以上段差があれば治療成績不良といわれています。
そこで、当院での結果では角度Aが平均16.2°、
段差Bが平均2.6mmと良好な成績でした。
橈骨の関節面の傾斜角度を指標とします。
正常範囲は7°〜12°といわれていますが、
成績不良例では、この角度がマイナスになってしまい、
橈骨の関節面が上を向いてしまうような状態になります。
当院の成績では、平均5.6°でした。
A、B、Cのそれぞれの数値を総合的に判断すると、
ギプスをとって最終的に調査した時点の値は
全体的に良好であると判断できました。
手首を上に上げる動作は平均52.7°、
下へ下げる動作は平均53.6°でした。
手のひらを上に返す動作で平均90°、
手の甲を上に向ける動作で平均80°でした。
これらの結果から、
最終的に調査を行った時点で、
手首の動きも良好であると判断できます。
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